奇病街(キビョウムラ) 8 ~貴方は僕に希望をくれた~

奇病街

ようこそ、ご機嫌よう!

梨くんです。

梵天の事をずっと(ろてん)と呼んでましたが(ぼんてん)だということに最近気付きました。

恥さらしですね。

はい、始めましょう。

はじめに

奇病街Part8です。今回は花嘔最終回となっております。瞬君はちゃんと治るのでしょうか?それとも・・・?それでは、早速本編行ってみましょう!どうぞごゆるりとお楽しみください。あ、おまけもありますよ~。行ってらっしゃいませ。

奇病街(キビョウムラ)Part8

注意 少々グロ注意、常識はずれの設定、語彙力低下、誤字脱字。
   このことを事を踏まえた上でご覧ください。

ヒリヒリと右の頬が痛む。確かに殴っては無いが引っ張たくとはどういう事だ?認めよう。僕が悪い。悪いのは分かった。けど、流石に手加減はしてほしい。鼓膜が破れるかと思った。

狼牙 「何故最初から言わないんだ!!??馬鹿野郎!そんな・・・そんな大事な事!!!!」

は?馬鹿野郎とはなんだ?僕にだって言い分はある。

瞬 「言い出せるわけ無いでしょう!?貴方とは違って僕の命は簡単になくなるんですよ!?なのに、今更感染しました。助けてください。なんて、情けない!それに・・・。」

そうだ。簡単になくなる。いう必要はない。例え、突然死んでもこの人は 人間は弱いからな で片付ける。そうであってほしい。それに僕は、貴方に迷惑を掛けたくない。人に迷惑は掛けたくはない。僕なんかの為にその人の大切な時間が割かれるんだったら死んだほうがマシだ。どうせ元奴隷の身だし。とは、言っても本当は狼牙さんと一緒に居たい。でも、考えてみてほしい?それは、僕の個人的な我儘でしかない。

狼牙 「それに・・・?」

瞬 「貴方に迷惑は掛けたくない。」

は?迷惑?どこが?

狼牙 「迷惑?どこがだ?」

瞬 「考えてみて下さいよ?自分は病気にかかっている。赤の他人もだ。赤の他人は元奴隷と言う捨て駒同様な立場。この世界において、この赤の他人の必要性は0に等しい。そんな赤の他人は貴方に卑しくも助けを求めたとする。さぁ、貴方はどう思う?迷惑だと思うでしょう?」

狼牙 「思わないな。」

瞬 「は?」

ここまで馬鹿なのか?

狼牙 「一つ、そいつは赤の他人なんかじゃない。大切な相棒だ。二つ、この世に必要性が0に等しい物なんて居ない。三つ、相手に迷惑を掛けずに生きている生き物なんてこの世に存在しない。誰しもが必ず何かに迷惑をかけている。どんな立場にあろうとも絶対だ。なのに、今更何をいい子面してるのか俺には理解が出来ない。生きているだけで迷惑をかけてきたんだ。今までずっと。」

瞬 「尚更死んだほうが・・・。」

狼牙 「でも、俺はその掛けられた迷惑が、とても楽しいと感じている。お前が俺に掛けた迷惑は、俺にとっての支えとなっている。ちなみに俺もお前やここの王に迷惑をかけている。特に王には昔、世話になった。」

瞬 「え?」

狼牙 「俺はお前にずっと迷惑をかけてきた。さて、瞬。その迷惑はお前にとっての迷惑行為だったか?」

瞬 「そんなわけ・・・。ないじゃないですか。いつもいつも、貴方との生活は楽しかったです。」

狼牙 「だろ?」

瞬 「う゛ん。」

何でだろう?すごく、嬉しい。

狼牙 「俺にとっては、お前が死ぬ方が迷惑だ。」

そっか。それなら・・・・。

瞬 「それならちゃんと生きなくちゃ駄目ですね。」

狼牙 「あぁ、そうだ。だから、冷める前にスパゲッティを喰え。」

瞬 「それとこれとでは話が違います。茹でエビ。」

狼牙 「全部喰うまで俺はその鎖を外さない。」

瞬 「茹でエビ!!」

狼牙 「喰え食え。」

瞬 「死んでやる!」

狼牙 「詰め込んでやる。」

その後喰え、嫌です、の攻防戦が繰り広げられたが、瞬が押し負け、半ば流し込むように茹でエビを胃の中に詰め込んだとか・・・。

瞬 「ゴホッ!ゴハッ!?」

鮮やかな桃色の小さな花。

狼牙 「ゴホッ。あぁ、鬱陶しい。」

瞬 「死んでしまえ。」

狼牙 「お前だけにこの苦しみを背負わせる気にはなれないからな・・・。」断る。

そう、一度、生命活動を止めれば、花嘔の苦しみからは解放される。あぁ、そうとも。だけど、何故それをしないのか、ずっと疑問だった。まさか、僕の為だったとは・・・。つくづくお人好しだと思う。

狼牙 「なぁ、単独で調べに行っていいか?」

瞬 「え?いいですよ。」

狼牙 「変な事したらまた繋ぐ。」

瞬 「えぇ?」

これ以上の負担を瞬に負わせる訳にはいかない。それで寿命が・・・感染が酷くなったら堪ったもんじゃない。もう、これ以上は見たくない。この手の中で、目の前で、大事な奴が死ぬのはもう御免だ。

一方で、瞬は暇を持て余していた。ふと、自分の部屋を見渡すと殺風景すぎて呆れた。気が滅入りそうだ。否、自分の部屋で気が滅入るとは何事だ?よし、散歩にでも出かけよう。思い立ったらすぐ行動!研究者の常識だ!!試せるもんは何でも試す!!お気に入りのタートルネックセーターで出かけよう。ふんわりとしたマフラーを首に掛ける。そういえばまだ寒いのに花が元気に咲いているのはどうかと思う。実までなってるし。この島は植物に優しいのか?どうせなら僕達にも優しくしてほしい。一応他者にうつさないように、マスクをマフラーの下にしている。

外に出ると、風が冷たかった。よし、コートはどこだ?今日はちょっと遠くまで行ってみよう。スタスタと苦しくない範囲で足を進める。普段なら、気にも留めないのだが、よく周りを見ると、ぽつりぽつり花が咲いている。こんな寒さでよく咲けるもんだな、なんて思いながら目に留まった花の一つに手をかけそっと、手折る。これは、アネモネか・・・。花言葉の一つに消えた希望があったな。今の僕にピッタリすぎて笑えてくる。よし、持って帰ろう。もう少ししたら帰ろうかな。と、再び歩き出した所ふと、誰かに呼ばれた。

? 「お兄ちゃん!」

瞬 「!? アヤメ…さん?」

アヤメ 「うん!」

そこのいたのは死華花のときの少女、アヤメさんだった。ヴァイオレット色の短い髪に黄色い大きなリボンがよく似合っている。ひとり?

瞬 「あの・・。お姉さんは?」

アヤメ 「お姉ちゃんは向こうに居るの。えっと、綺麗なお花見付けるんだって。」

う~ん。嫌な予感が・・・。

アヤメ 「お兄ちゃん、一緒に遊ぼ!!」

瞬 「いいですよ。」

マスクもしている。うつすことは無いだろう。それに、アザミさんを放っておいたらまた大変なことになりそうだ。

手を引かれて、着いたのはアザミさんの所。

アザミ 「ん?あっ!あの時のお兄さん!!」

瞬 「こんにちは。お元気でしたか?」

アザミ 「はい。」

アヤメさんと同じ、ヴァイオレット色の長い髪は高い位置で結ばれていて、黄色いリボンがとても目立っている。左眼には花柄のかわいらしい眼帯がされていた。うん。女の子らしい。

瞬 「何をしてるんですか・・?」

アザミ 「お母さんにお花を・・・。」

瞬 「いいですね。ですが、あまり無暗に近づかないようにお願いします。」

アザミ 「は、はい。・・・あ・・・その花・・・。」

瞬 「あぁ、これは・・。」

アザミ 「アネモネ・・・。」

瞬 「知っているんですね。」

アヤメ 「綺麗ね。」

アザミ 「アヤメ。ちょっとあそこで、遊んできて。私は、このお兄さんとお話ししたいから。」

アヤメ 「はぁーい。」

トトトッと走って行くアヤメさんの背中を見守りながら、口を開く。

瞬 「どうしたんですか?アザミさん?」

アザミ 「何か悩み事があるように見えたので。」

瞬 「どうしてです?」

アザミ 「その花の花言葉・・・。知っていますか?」

瞬 「えぇ。」

アザミ 「雑談になるんですけどね。私、ちょっと、昔まで人が嫌いでした。」

瞬 「そうなんですか?」

アザミ 「はい。だから、学校でもずっと独りぼっちで。人が信じられなかった。けど、アヤメが言ったんです。お姉ちゃんが独りぼっちでいるなら私は消えてやる、って。」

瞬 「わお。」

アザミ 「本当に一度消えました。」

瞬 「わー。」

アザミ 「本当に焦りました。まぁ、直ぐに見つかったんですけど。」

瞬 「それはよかった。」

アザミ 「その時私は誓いました。アヤメを心配させてはいけない、と。まぁ、守れませんでしたけど。」

瞬 「でしょうねぇ。アザミさんが消えた時すごく心配してましたから。」

アザミ 「私の希望はアヤメです。お兄さんの希望はなんですか?」

瞬 「!?・・・。さぁ?まだ、その答えは分かりません。」

僕の希望・・・?

アザミ 「まだ、十一歳の私が言えたことではありませんが・・・。きっと、その答えは近くにありますよ。」

瞬 「・・・・。」

アザミ 「お話は以上です。」

瞬 「そうですか。ありがとうございました。それでは、僕は帰ります。貴方たちもお気を付けて。」

アザミ 「はい。」

帰る。自分の部屋に着くとアネモネを窓際に飾った。殺風景なへやに鮮やかな色が一つ増えた。一輪だけだけど、とても良く映えている。うん。満足満足。花言葉は少々、暗いけど・・・。まぁ、無いよりは良い。ただし、暇なのには変わりない。そうだ、狼牙さんの部屋に行こう。

この研究所は広い。部屋もいくらかは余っている。けれど、見つかることはまず、ありえない。ココは結構な森の中にあり、出るのは簡単だが見つけるのはとても難しい。たいていの人なら迷って変なところに行きつくだけだ。ん?話がそれた気がする。よし、戻しましょう。

狼牙さんの部屋に着くと、まず目に留まるのが左側の壁を埋め尽くす本棚。何冊あるんですか?500は優に超えている。まぁ、案外勉強熱心の読書家ですからね。そして僕の楽しみはその中から数冊拝借して寝落ちすることだ。本を読んでると眠くなるのは僕だけじゃ無い筈。さて、部屋に戻ろう。面白そうなのがあった。

寝転びながら本に目を通していると、案の定、睡魔が襲ってきた。はい、おやすみー。もしも起こしたら本の角で・・・・・・( ˘ω˘)スヤァ

研究所に帰った時にはもう辺りは夕日で朱く染まっていた。何も収穫がない。腹立たしいな。こうやって息をしている間にも花嘔は身体を蝕んでいく。一応、研究材料として白い木に生る果実は数個捥ぎ取ってきた。これを気の済むまで調べてやる。瞬から研究道具を借りよう。爆発させたら土下座でもするか・・・。

狼牙 「ん?」

ドアがあけっぱ・・・。あぁ、なるほどな。俺の部屋に入ったのか・・・。

本が数冊抜けている。いつもの事なので左程気にも留めない。瞬の部屋に入ろうとノックをしてみるが返事がない。仕方なく、勝手に入る。すると、まぁ、何とも阿保らしい顔でスヤスヤと寝息を立てているではないか。っておい!本に涎を垂らすな!!あ~あぁ~。そろりと、手を添えた瞬間、ブウォンッと音がして本の角が顔に向かってくる。ギリギリで防いだ。真顔だ(正しくは表情に出す暇がなかった)が内心滅茶苦茶驚いている。心臓バクバク。恐る恐る瞬を見るが先程と変わらなくスヤスヤしている。は?嘘を付け起きてんだろ。ありえねぇわ。どんだけ寝相悪いんだよ!?疲れた眼でふと、窓を見る・・・。ん?花?アネモネか?随分と悪趣味な。

狼牙 「こんなのより・・・。こっちの方がお前に似合うぞ・・・。」

音を立てずに窓辺に近寄ると、アネモネの代わりにカルミアを刺す。アネモネは俺が大事に大事に喰ってやろう。なぁに、大した意味は無い。ただ、消えた希望を俺が咀嚼して飲み込むだけだ。おやすみ。

瞬 「ん?・・・。ふぁ・・。」

目が覚めたらまさかの朝。うそぉ・・・。カーテンを開けようと窓に近寄った時ピンク色のカルミアが目に入る。カルミアの花言葉は大きな希望。

瞬 「・・・。グスッ。あぁ、もう。朝から目が乾く・・・。」

スタスタと階段を降りていくとキッチンには見慣れた背中がある。その背中に向かって一言。

瞬 「ありがとうございます。」

狼牙 「何が?」

瞬 「なんでもありません。」

狼牙 「何食べたい?」

瞬 「お任せします。」

希望のカード(Joker)は狼牙さんがくれた。なら僕が神様から奪うのはハートの一(命)のカード。諦めるのはもうやめた。さぁ、研究に励まなければ・・・。って茹でエビ入りナポリタンンン!?!?!?

瞬 「いっぺん地獄におちろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

狼牙 (誰かさんが無意識に本の角で殴り掛かってきたもんでなぁ。)

その後、果実を二人でそれぞれ調べていくと果実の種だけに特別な成分がたっぷり入っていることが分かった。それは、ある種の解毒薬のようなもので試しにすり潰してみると独特の苦みのある香りと共に水色の汁が出てきたので、試しに狼牙さんが舐めてみると咳と息苦しさが止まった。つまり、治った。僕は助かった。まだ生きれる。まだ、貴方と一緒に笑える。たくさん迷惑かけあえる。けど、今はただ、貴方にありがとうを・・・。この口で。

王様へ報告書を届けると早速次の奇病の情報を渡される。

次は 狂胞子 

キョウホウシ・・・。

とても厄介らしいが今となってはどんとこいだ。あなたと一緒なら何でもできる気がするから・・・。

二人は気付かない。窓の外にふわり黄色い小さな花が風に吹かれていたことを。さてそれは・・・。誰の口から?さぁ?そもそも花嘔とは限らないだろう?なら、今は忘れてしまえ。

Ending 「You are my hope.」(貴方は私の希望)

花嘔編 完

読んでくれた皆様本当にありがとうございました。次の奇病は狂胞子(キョウホウシ)です。それでは、おまけへ、行ってらっしゃいませ。

おまけ

瞬 「ねぇ。狼牙さん?」

狼牙 「ん?」

瞬 「貴方、花言葉に詳しいんですね?」

狼牙 「あぁ。本に載ってるからな。結構面白い。そういうお前も結構知ってるんだな。」

瞬 「えぇ。昔は主様にたくさん送ってましたからね。スノードロップを。」

狼牙 「うわぁ・・・。」

瞬 「そうそう。奇華たちにも花言葉があるって知ってました?」

狼牙 「いや、初耳だ。例えばどんなだ?」

瞬 「まず死華花は、紅に誘われた、鏡写し、貴方無しじゃ生きていけない、命取り。です。」

狼牙 「ほー。鏡写しは意外だな。花嘔は?」

瞬 「花嘔全体では、無くし物、さっさと吐き捨ててしまえ。色によっても違いましてね。桃色は、淡い血液。橙色は、悲痛な現実。水色は、命。最後に黄色ですが、希望です。」

狼牙 「吐き捨ててしまえ・・・。」

瞬 「ぴったりすぎて笑えます。」

狼牙 「さて、そろそろ寝るか。今日は寒いし・・・。早めに。」

瞬 「はい。」

ベットに潜ると布団がひんやりしてて凍るかと思った。そうだ良いこと思いついた。のそのそと枕を持って狼牙さんの部屋に向かう。え?もう寝てるんですか?疲れてるんですかね・・・。

ゴソゴソと潜る。素晴らしい程に温かい。あぁ、幸せ。おやすみなさい。

勝手に潜ってきてあろうことか、俺のシッポを抱き枕にするとは・・・。いい夢見ないと許さないからな。お休み。相棒。また明日・・・。声を聴かせてくれよ。

おまけのEnding 「Sweet dreams.」 (良い夢を)

あとがき

いかがでしたでしょうか?今回は花嘔最終回でした。次は狂胞子です。ちなみに僕は狼牙さんのシッポをモフモフしたいと思ってます。結構温かいんですよ。そういえば陰ながら瞬君に希望を持たせやすくしてくれたアザミさんも根はとっても優しいお姉さんです。大人びているのでなかなか友達が出来ないようですが本人はアヤメさんが傍にいてくれればソレでいいらしいです。学校と言っても大きくはなく、小さい物なので皆さんの想像しているような学校とは少し違いますね。ちなみにこの島の皆さんは瞬君たちのような性能のいいマスクは無いのですが、胞子や花粉を最低限吸わないように出来ているマスクはしていますよ。あ、長くなってしまいました。すみません。それでは、次回もごゆるりとお楽しみください。貴方に幸福がありますように。ご機嫌よう!

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